ライト・トーナス値とは(色と光と緊張の関係)
公開日 更新日
1問 読む前に、ひとつ答えてみてください
これまでの回答 48,768件 (当サイト閲覧者の回答)
【2026年8月14日 改訂】本記事は、出典を確認できた事実に基づいて全面的に書き直しました。従来掲載していた色別の「ライト・トーナス値」の一覧表と、「1910年にシュタインやフェレがまとめた」という記述は、一次資料で確認できなかったため削除しました。数値の出どころとして原典で確認できた、フェレの実験(1887年)を紹介します。
ライト・トーナス値は、色彩心理の解説で「光や色が筋肉の緊張度に与える影響を数値で表したもの」として紹介される用語です。この記事では、その数値の出どころを原典までさかのぼり、確認できた事実を紹介します。あわせて、興奮と緊張の関係の整理と、落ち着いて行動したいときの色の使い方をまとめました。
数値の出どころ ― フェレの実験(1887年)
フランスの医師シャルル・フェレ(Charles Féré)は、感覚への刺激が筋力に与える影響を研究し、1887年の著書『Sensation et Mouvement(感覚と運動)』に結果をまとめました。フェレは、色ガラスや色つきゼラチン板を通した光を被験者に見せ、握力計(dynamomètre)で握る力の変化を記録しています。
同書の41〜42ページには、神経系の症状がある被験者1名(反応が出やすい被験者として選ばれています)の記録として、次の値が示されています。
| 条件 | 握力計の値 |
| 平常時(右手の通常値) | 23 |
| 青の光 | 24 |
| 緑の光 | 28 |
| 黄の光 | 30 |
| 橙の光 | 35 |
| 赤の光 | 42 |
出典: Féré (1887) pp.41–42。数値は握力計が示した値(原文では「圧(pression)」)。該当ページ(Gallica・42ページ)で原文を確認できます。
「23」は色光を当てていないときの、この被験者の右手の通常値です。フェレはこの力を高める作用を「力動発生(dynamogène)」の力と呼び、赤がもっとも強いと報告しました。
フェレは同書で追試についても述べています。プリズムで白色光を分解したスペクトル色を使った実験(M. ロンドとの共同研究)では、力を高める作用は赤・橙・緑・青・紫の順に小さくなりました。黄は効果が安定せず、最初の実験で使った「黄」のフィルターが実際にはくすんだ橙色だったことも、フェレ自身が記しています。
この記録は、ごく少数の被験者を対象にした19世紀の臨床観察です。測定されたのは握力で、値の単位や実験条件の統制は、現代の実験心理学の水準と大きく異なります。原典はフランス国立図書館の電子図書館Gallicaなどで全文が公開されており、誰でも確認できます(巻末の参考文献を参照)。
色が心と行動に与える影響について、現代の研究がどこまで確かめているかは、レビュー論文を紹介した記事「色は本当に心に作用するのか?」にまとめています。
興奮度と緊張度
ここからは、緊張という状態について考えてみます。緊張とは、何かの影響で自然な心身の状態が硬直して、自分らしい言動が行えない状態として考えてみますね。

例えば少し怒り気味に興奮しているときは、全身に力が入ってしまい、身体が固まったり強張ったりする傾向にあります。そして興奮の度合いが一定の水準を超えると言葉がごもったり、動けなくなったりして、怒っていることをうまく相手に伝えることができなくなります。
音楽のライブイベントで盛り上がっているときはどうでしょう。最高潮の場面でも心身には適度に力が入っている状態で、適度に興奮して緊張した時間を過ごした後は、いい意味で疲れてすっきりとした感じになります(サウナに入った後のような感じですね)。

このように興奮と緊張は、別々に動くことがあります。緊張は興奮・沈静との関係だけで考えるより、ポジティブ・ネガティブとの関係をあわせて考えると整理しやすくなります(次の表は色彩101による整理です)。
| 興奮/沈静 | ポジ/ネガ | 緊張度 |
| 興奮 | ポジティブ | 低い |
| 興奮 | ネガティブ | 高い |
| 沈静 | ポジティブ | 低い |
| 沈静 | ネガティブ | 低い |
心が開放的になっているときは、リラックスしていて緊張度が低くなります。心が塞ぎこんでいるときは、反発のエネルギーを持っているときに緊張度が高くなり、そうでないときは緊張度が低い(諦めている)状態になります。
落ち着いて行動したいときの色
各色に対する人の感じ方には、ポジティブ面とネガティブ面があります。例えば赤には「パワー・生命・愛・ドラマチック・意欲的・元気が出る」といったポジティブなイメージと、「怒り・危険・神経過敏・性急」といったネガティブなイメージがあります。
ネガティブなイメージに心が捕らえられているときは、緊張が高止まりしている可能性があります。そんなときは、沈静感のある色、リラックスできる色を身近に置いて緩和することをお勧めしています。赤のポジティブなイメージで乗り切る場合も、度が過ぎるとネガティブに転じるため、緩和するタイミングをつくると続けやすくなります。

当サイトでは、落ち着いて行動したいときの色としてベージュをお勧めしています。ベージュは暖色系の低・中彩度、中明度の色です。彩度を高くすると橙〜黄の色相になります(PCCSのトーン概念図参照)。木や土など自然物に広く見られる色で、穏やかな沈静感と、暖色系の優しさ・温かさをあわせ持っています。


何か新しいことや、一抹の不安を感じることを行うときには、安心感を覚える色を身近に置いておくことをお勧めしています。安心感のあるベージュを身近に置きながら行動を進めると、意欲的に推進力をもって行動する気持ちと、落ち着いてリラックスして行動する気持ちのバランスを取りやすくなります。

参考文献
- Féré, Ch. (1887). Sensation et mouvement : études expérimentales de psycho-mécanique. Paris: Félix Alcan. pp.41–42.(Gallica(フランス国立図書館)で全文公開・数値の記載は42ページ / Internet Archive)
- Elliot, A. J. (2015). Color and psychological functioning: a review of theoretical and empirical work. Frontiers in Psychology, 6:368. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2015.00368
※ 本文中のフェレの実験の記述は、上記Gallica公開の原典(1887年、Félix Alcan刊)41〜42ページの本文を当サイトで直接確認したものです。興奮・緊張の整理と色の取り入れ方の提案は、色彩101による整理・意見です。