色彩トピックス

” 暮らしを愉しくする色のあれこれ ”

 

ベイカー・ミラー・ピンク(Baker-Miller pink)とは・・・

  • 作成日:2020/11/10

  • 更新日:2022/04/12
  • 世界的にみても男女合わせて青に好感を持つ人が多く、それは青色が空、海、キリスト教圏では聖母マリアを象徴する色だからかもしれません。


    青はリラックスを与える色として使用されます。格式高く?表現すると「短波長の光は副交感神経を刺激する」といった感じでしょうか。


    しかし、長波長の光にもリラックス感を与える色があります。そう、ピンクです。ピンクに対する憧れや情は強く、暖色ですが心を落ち着ける色として高い人気を誇っています。


    ベイカー・ミラー・ピンクは、そういったピンクが与える影響を考えさせてくれます。
    ベイカー・ミラー・ピンク(Baker-Miller pink)とは・・・
    ベイカー・ミラー・ピンクとは、一般的に下記のピンクになります。
     
     
    R:255、G:145、B:175
    別名、Schauss pink、Drunk-Tank Pink


    ベイカーとミラーは人物の名前です。二人はthe U.S. Naval Correctional Centerのdirectors、つまりアメリカ海軍所有の囚人を預かる施設の所長です。正確には当時、ベイカー(Gene Baker)はChief Warrant Officer、ミラー(Ron Miller)はfacility commander Captainでした。この二人がこのピンクを大好きだったから、この名前がついたわけではありません。


    もう一人重要な人物がいます。The Institute For Biosocial Researchの所長だったアレキサンダー・シャウスです。彼は1979年に、ピンクが鎮静効果のあることを発表します。
     

    The calming effect of pink if appropriately applied, relaxes hostile or agitated behavior in approximately ten to fifteen minutes.

    ~ Tranquilizing Effect of Color Reduces Aggressive Behavior and Potential Violence より~
    >>1979年の発表原文はこちら

    つまり、「ピンクを適切に使用すれば、10分~15分ほどで敵対的あるいは興奮した態度が緩和される」ということです。


    彼はベイカーとミラーが所長を務めていたthe U.S. Naval Correctional Centerの囚人を入れる部屋(独房)の壁の色をピンクにぬり、その中に囚人を入れました。すると、10分~15分で囚人の攻撃性が弱まり、独房を出た後も効果が30分ほど持続したということです。

    独房をピンクに塗ることは、あるいは前代未聞だったかもしれません。それも海軍の施設で。この実験はベイカーとミラーの協力なくしては行えず、シャウスが二人に敬意を表して、このピンクのことを「ベイカー・ミラー・ピンク」と名付けたということです。


    ベイカー、ミラー両名をはじめ、当時多くの人がピンクにそれほどの効果があることに感動したのではないでしょうか。囚人の攻撃性が緩和される。その後多くの刑務所でベイカー・ミラー・ピンクの独房が作られます。今ではピンクには心を和らげる効果があるといって間違いないと思います。


    昨今日本ではアンガーマネジメントがいわれるようになりました。例えば何か怒りを感じたときには、ゆっくり6秒数えてやり過ごす、といった感じです。その時、ピンクが近くにあれば、ピンクを眺めながら6秒数えると効果がさらに高まることが期待されます。イライラを感じたときにはピンクとともに癒しのスイッチを入れてみましょう。

     
    ベイカ・ミラー・ピンク
    ベイカ・ミラー・ピンク
    ※写真はイメージです。
    その他のピンク
    さて、ベイカ・ミラー・ピンクと名付けられたピンクが独房で鎮静効果があったことはわかりました。


    ただ、このピンクはどこかセクシャルで、少女的、女性的なイメージを抱く人もいるため、囚人の中には侮辱的だ、と逆に怒りを表す人もいたとか。それに対して、あまりにも嫌でその独房には入りたくなく、素行がよくなったという見方もあるようです。


    われわれ日本人にとってピンク色というと、桜色を連想する人も少なくありません。温かい春の陽気、出会いと別れのロマン、最も思いやりを感じる色として日本の文化の一端を担っています。

     
     
    >>桜色についてはこちら
     
    ベイカ・ミラー・ピンク

    ベイカ・ミラー・ピンクに少し強さを感じるのは、囚人の男性性に対してはこれくらいの色みの方が適切だからかもしれませんね。
    ライター・編集者

    カラーオン Mitsuru

    カラーコーディネーター

    自転車店勤務時代にウェブデザイン・チラシデザインの制作、オリジナルデザイン自転車(TVドラマでも使用)の企画を担当したことから色彩の世界へ。 「色彩が社会を元気にする!」をモットーに、多くの人が色・コーディネート・デザインを楽しめるようにコンテンツをご提供しています。
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